2008年07月06日
本泥棒 / マークース・ズーサック
![]() | 本泥棒 (2007/07) マークース・ズーサック 商品詳細を見る |
ナチス政権下のドイツ。里子に出された孤独な少女リーゼルの密かな慰めは、本を盗むことだった。数奇な運命を辿る「本泥棒」の一生を、「死神」がナレーターとなって読者に語りかける異色の物語文学 。
死神が語る物語。それは”本泥棒”というナチス政権下の時代を生きた少女の物語。少女を見たのは三回だけ。どの光景にも印象的な色彩が伴っていた。
白。降りしきる雪の色。汽車の中に母親と、一人の少女とその弟の姿があった。しかし、その弟はもう息はしていない。死神は自身の役目を果たすべく、彼に近づき、その時”本泥棒”と初めて出会ったのだ。
黒。渦巻く雲の色。墜落した飛行機へと近寄り、操縦席にいる、今正に死にいこうとしている青年に熊のぬいぐるみを差し出す少年。その傍らに、成長した”本泥棒”の姿を見つける。
赤。流れゆく血の色。空襲により、街は破壊され、人々はなすすべもなく死んでいく。そんな中に一人佇んでいた”本泥棒”。そして”本泥棒”が書いた本はここで死神によって拾われ、以降死神にとって大切なものとなる。
冒頭は上の三つの印象的なシーンから入っていきます。実は”赤”のシーンはほぼクライマックスにあたるシーンなんですが、この長い長い物語を語る死神は語る順番に拘泥せず、気の向くままに物語を語っていきます。そのため、章のはじめに、その章の結末にあたる出来事をばらしちゃったりとか。なかなか面白い構成の物語です。
主人公の”本泥棒”ことリーゼルが”本泥棒”となった理由。それは弟の死に直面した際、墓堀人が落としていったある本を盗んだことがきっかけ。実はまだリーゼルはこの頃文字を書くどころか読むことすら出来ない状態でした。弟の死からまもなく、母親と別れ、フーバーマン家に引き取られてから少しずつ字を読めるようになるのです。弟の死と、母親の別れ、そして本を盗むという行為。それらが彼女にとって”読む”ことを特別な行為にしました。
一方で時代はナチス政権下。ナチスに否定的な継父のハンスは、金銭的にも、街での立場上もあまりよいとはいえない状態に。更にはユダヤ人の青年を匿うことによって更に状況は悪くなっていきます。そんな中で生きるリーゼルの心情を、死神は刻々と物語っていきます。
オーストラリアの作家さんというのはおそらく初体験。そのせいかなかなかユニークな物語だと感じました。少々長いものの、それをあまり気にせず読める本です。児童文学というには少々”後半”が暗い気もしますが、是非ともこの作品を一度読んで、物語の面白さに目覚めて欲しいですね。
勝手に評価:
(3.2点) / (5.0点満点中)
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| 海外作家 マ・ヤ・ラ・ワ行
| 10時05分
| comments:2 | trackbacks:1




おんもらきさん、こんばんは。
毎度ですが、トラバしちゃいましたー。
私が読んだのは、去年の末だったんですが、なかなか印象的な本でした。
死神の語り口が、また新鮮でしたよねえ。
| つな | 2008/07/06 23:27 | URL | ≫ EDIT